本日発売の日経新聞朝刊コラム「私見卓見」に、ナミねぇの寄稿「障害者の眠る力 もっと生かせ」が掲載されました!!

2016年6月23日

 

「障害者の眠る力もっと生かせ」
 社会福祉法人プロップ・ステーション理事長 竹中ナミ

日本経済新聞2016年6月23日発行 朝刊コラム「私見卓見」 より

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「障害者の眠る力もっと生かせ」
社会福祉法人プロップ・ステーション理事長 竹中ナミ

 日本には重い障害があるにも関わらず働く意欲を持ち、納税者となって社会を支える一員でありたいと考えている「チャレンジド」が多数存在する。チャレンジドとは障害のある人を表す米国発祥の言葉で「挑戦する使命や課題、チャンスを与えられた人」を語源とする。

 私はチャレンジドのICT教育と、彼らに仕事を発注しようと考える企業をインターネットなどで仲介する事業を行ってきた。すべての人が持てる力を発揮し支え合うユニバーサル社会の実現を目指して活動を続けている。

 安倍首相が掲げる「一億総活躍社会」はチャレンジドの就労を促進する大きなチャンスだ。実際、国内の大手有力企業から「チャレンジドに仕事を発注する取り組みにチャレンジしたい」とのアプローチもいただいた。新たな社会の到来を期待しているが、障害のある人の雇用を支える今の制度には課題もある。

 企業に一定以上の雇用を義務付ける障害者雇用率制度は週5日通勤できない人や一日平均4時間未満しか働けない人を雇っても雇用率にカウントしない。つまり通勤が困難だったり、日常的に介助・介護が必要で体調に合わせた不定期な働き方しかできなかったりする人は、制度の支援を受けられないということだ。

 プロップ・ステーションは企業等から仕事を受注し、複数のチャレンジドに体調や技術などを勘案して配分している。ICTネットワークを駆使することでワークシュアし、自宅や施設、作業所など介護が受けられる場所で体調に合わせて働くチャレンジドを増やしたいと考えている。

 ただ雇用率制度では直接雇用しなければ企業は「義務を果たした」と認定されない。企業がいくら当法人を通じてチャレンジドに仕事を発注しても、当法人と彼らの請負契約になるので発注した企業は「社会的責務を果たした」とはみなされない。

 直接雇用でなくとも仕事の発注量や発注率を雇用率に換算できる制度改正を行えば、発注企業の大きなインセンティブとなるはずだ。チャレンジドの「眠れる力」をより生かすことができると思う。

 私は43歳になる重度脳障害の娘の母親だ。「自分が安心して先に死んでいける社会であって欲しい」というのが切実な願いだ。女性や高齢者だけでなく、チャレンジドの多様な働き方を実現することが「一億総活躍社会」への道をひらくと確信している。

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